国策としての原子力

前提 2011.05.12
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原子力が必要かどうかからはじめるのではなく、「原子力がない」前提での お話とするべき 三原則
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「原発なし」を大前提ですべて行う必要がある。
1)代替エネルギーの活用を図る  現時点で使用可能なものを徹底して活用。かつ普及策を出す。
2)今後の方針の明示:原発の廃止  原発の安全性の向上。かつ縮小廃止していく。
3)現状追認は避ける必要あり。 ずるずる現状追認再開は到底世論のご理解は得られない。 まず無理。
論点整理 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/entaku/H11/teigen/ronten.html Link
原発は今後も伸び続ける 公開 柏木 孝夫(東京工業大学教授) 2011年4月号 連載〈巻頭インタビュー〉
http://www.sentaku.co.jp/interview/post-1598.php Link
細川弘明と学ぶ「環境問題」の見方
http://www.kyoto-seika.ac.jp/hosokawk/class/2002/assessment/email_04.html Link
 雑誌「選択」5月号より。
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 「ダムなら二千億、空港は五千億。原発なら一基で六千億だ」これは日本の原発利権をよく知る、ある中堅ゼネコン元会長の発言だ。
 「原発のカネは麻薬。『麻薬のようなもの』ではなく、禁断症状も引き起こすクスリそのもの」
 納める固定資産税は、原発自体の価値が落ちることで、年々減少していく。 原発マネーの旨味を存分に味わわせ、電力会社が新たな原発が必要になるころ に、住民が禁断症状を感じる程度に「投与量」が絞られる仕組みなのだ。
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「日本の原子力業界全体を把握している人間なんていないのではないか。大きいこともさることながら、複雑すぎる」
 福島第一原子力発電所の事故以降、取材を続ける記者の言葉だ。
 最近、メディアでしきりと「原子力村」という言葉が使用されている。しか しこの業界は、知れば知るほど「見えない部分」の巨大さに気付かされる世界 なのだ。
 制度の上で、この「村」を司るのは内閣府の原子力安全委員会だ。電力会社 のように原子炉を持つ事業者を直接指導することはできないが、規制監督官庁 (原子力安全・保安院や文部科学省など)を監視する立場にある。また、電力 会社などへの調査権限も持つ。

 しかし、過去繰り返されてきた原発事故と同様、今回もその指導力のなさが 浮き彫りになった。たんなる学者の寄せ集めであり、「原子力村」の指導者で はない。

「東京電力が日本の原発を主導してきたのは間違いない」
 原発や来電の取材を続けるライターの一人はこう語る。日本の商用原子炉が、 それまで独自で行ってきた研究を無視し、中曽根康弘氏らの「政治主導」により米国技術を導入することでスタートしたのは既に報じられている通りだ。
 国策として始まった原子力発電を引っ張ってきたのが東電である。日本初の商用原子炉は、十電力会社(電源開発を含む)の出資によりできたが、この中 で東電の力が突出していることは言うまでもない。既存原発保有数でも他を圧 倒している。
 その東電内部で、原子力部門は特に閉鎖性が強い。原発取材経験のあるフリー ライターは、昨秋、来電幹部OBに会った際にこう言われた。
 「日本の原発稼働率は六五%しかない。しかし、そこで何か起こっているの か、本当のところは私のようなポストにいても見えない」
 他部門出身の、ある東電OBも原子力部門の特殊性を語る。
 「うちはセクショナリズムが強いが、中でも原発組は火力に代わり自分かち が東電を引っ張っていくという白負も強く誰も寄せ付けない。コアのメンバー は百人ほどだが、極めて強い独立性を保つ」
 単体でも三万六千人あまりの社員を抱える東電全体からみれば、ほんの一部だ。そこは原子炉技術者の「城」であり、専門性の高さもあって、外からは内 部を把握できない。もし仮に、経営者が原発事業の路線変更を考えようにも、 実態がわからず、手を突っ込むことができないのだ。
 東電をけじめとする電力会社や、東芝、日立製作所といった原子炉メーカー の技術者の集まりをもって、「日本の原子力村」ととらえる向きがある。しかしそれは事実の倭小化だ。彼らは確かに「頭脳」であるが、村の中の「技術者 集団」にすぎない。
 日本の商用原子炉の危険性を誰よりも知り尽くしながら、「無謬の安全性」 の偽装に加担してきた技術者の罪は重い。人材を送り込み、陰に陽に支えてきた大学、特に東京大学原子力工学の人間も批判を受けるべきだ。しかし、原子 力村の肥大化は、彼らの与り知らぬところで進行したのも事実だ。

  日本原子力産業協会(原産協)という社団法人がある。一九五六年、日本の「原発の父」のひとりである正力松太郎氏が提唱し設立された団体だ。会長は、今井敬日本経済団体連合会名誉会長、副会長に東芝の西田厚聡取締役会長 が就き、理事には原発メーカーや電力会社の幹部、大学教授などが並ぶ。「常勤」ということで元職が公表されていない、理事長の服部拓也氏は、東電出身 だ。
 原産協の会員名簿が、原子力村を見渡す上での参考になる。年間十三万円(一 口)の会費を払う会員の数は約四百八十に上り、居並ぶのは間違いなく日本の 原子力に群がる組織ばかりだ。電力会社はもちろん、原子炉メーカー、プラント・メーカーが主要メンバーだ。
 そして、ゼネコン、銀行、各種財団、社団法人などと並んで、原発立地自治 体も会員となっている。
 今回の事故の一義的な責任を問われるのは、「原子力村」の意思決定を行ってきた「川上」に存在する電力会社や経済産業省の連中である。しかし、「原子力村」の大きな問題点のひとつは、「川下」の原発立地自治体に染みついた、 拭い難い依存体質だ。
 「東電からカネをもらっていた連中は、文句の一つも言わない」
 福島県浜通りの町に長年住み、現在は他県へ避難している男性はこうつぶやいた。彼が住んだ町には、「電源三法交付金」をけじめとする多額の金が舞い 込んだ。
 「現地対策費」と称される交付金については説明の必要はないだろう。また、 これとは別に、電力会社から住民への「直行汪入」もされ、中でも大きなもの は、漁業補償だ。前出の男性は農業を営んでいたが、漁民との格差は信じられ ないほど大きかったと言う。
 「そもそも、あの地域の漁港はどこも規模が小さく、漁獲高もたかがしれている」
 にもかかわらず、東電からは漁協組合員一人当たり五千万円とも、六千万円 ともいかれる金が、「漁業補償」として支払われた。
 漁師に手厚いのは、どの電力会社にも共通している。補償以外にも、継続的に漁師にカネを流すシステムも存在する。新潟では、「環境調査」という名目 で、定期的に海藻などを採取する仕事を漁師に発注しているという。
 「ある会社は定期的に原発内で放射線量を計測するという簡単な仕事だけで 食っていける」(事情通)という福島の話もある。こうして一部住民は東電と 「べったり」になっていく。
 原発のカネはきめ細かく投人される。福島では原発マネーで補填された、格安親子旅行が定期的に行われていた。「電力の現状を知ってもらう」という名目をつけて、川崎の火力発電所などの施設を少し見学し、都内のホテルに宿泊。 翌日はディズニーランドで遊んで一人五千円程度。また、地元の組合などが会合を開けば、付け届けがあり、地域のホールにはグランドピアノを寄贈するな どのケースも枚挙に暇がない。
 「原発城下町は、建設業の就業人口が平均より大きい傾向がある」
 原発取材を続けるライターはこう語る。原発自体の建設と、三法交付金特需 による「ハコモノ」が建設されるからだ。そこでは杜撰な工事が行われることもある。新潟県刈羽村に一九九九年に完成した生涯学習センターは、総工費八十億円以上、うち七十億円あまりを三法交付金でまかなった。この建物では、 安い建材を使い、都合数億円にも上るカネがどこかに消える「手抜き工事」が発覚した。
 立地自治体におけるハコモノ建設などの「振興策」には、「電源地域振興センター」という財団法人が関与する。同センターの現在の会長は東電の清水正 孝社長だ。
 「ダムなら二千億、空港は五千億。原発なら一基で六千億だ」
 これは日本の原発利権をよく知る、ある中堅ゼネコン元会長の発言だ。この場合の「空港」とは海上埋立型のものだ。個別具体の数字ではないが、原発利 権の大きさをよく言い表わしている。ダムや空港といった「巨大土木工事」と 比較して、原発一基でこれだけかかるのはすんなりと合点がいかない。埋め立 てもなく、中に燃料棒を差し込むまではただのプラント工事にすぎないのだ。
 こうした原発マネーによる「汚染」の根深さを端的にあらわしたのが、四月に行われた統一地方選挙の結果だろう。直前に、これだけ深刻な原発事故による被害を目の当たりにしながら、「反原発派」が躍進どころか、議席数を減ら した原発立地自治体もある。
 「原発の是非」は争点にもならず、危機感を持った「推進派」の結束に結び 付いただけだった。
 新潟県議会議員選挙に立候補し敗れた武本和幸氏が語る。元刈羽村議の武本 氏は、長年この地で原発反対運動を続けている。
 「原発のカネは麻薬。『麻薬のようなもの』ではなく、禁断症状も引き起こすクスリそのもの」
 実は地元に落ちるカネは、立地当初のほうが多い。三法交付金は完成前後に 支払われ、電力会社が「分厚い」とされてきた壁だって、水素爆発で吹き飛んでしまう程度なのが明らかになった。原発建設費自体が、カネをばらまくための「どんぶり勘定」ではないのかという重大な疑惑が浮かぶ。 納める固定資産税は、原発自体の価値が落ちることで、年々減少していく。原発マネーの旨味を存分に味わわせ、電力会社が新たな原発が必要になるころに、 住民が禁断症状を感じる程度に「投与量」が絞られる仕組みなのだ。
 前ぺージで、原産協の会員について原子力村を把握するうえでの「参考」に なると記述した。なぜなら、この会員の下に、まだ「村人」が多数ぶら下がっているからだ。そしてこの中には「隠れ村民」とも呼ぶべき人間たちもいる。
 「暴力団が、右も左もわからぬような原発現場作業員を送り込む」「原発建屋内で作業すると日給が四十万円」
 今回の事故後、ありとあらゆる真偽不明の情報が飛んだ。これについて、暴力団関係の取材が多い雑誌ライターはこう話した。
 「昔はあっただろうが、最近は暴対法もあり、入れないはずだ」
 なるほど「都市伝説」の類かと思いきや、そうではなかった。反社会勢力は 今でもたしかに「原子力村」に巣食っていることの一端が、浮き彫りになった のだ。
 関西に「本社」を構える会社がある。仮にX社とする。規模はそれほど大きくなく、社員数は百名前後だ。同社は原発内や火力発電所内での作業などを得 意とすると宣伝している。そしてこの会社の取締役に名を連ねる一人の人物がいる。この人物はほかにもいくつかの会社に関与しているのだが、そのうちの 一社の取引先に、あからさまに「暴力団フロント」然とした企業が並ぶのだ。
 X社は、原発内作業を中堅プラントーメーカーの下請けで受注しているとみ られる。そして、X社はその仕事を、Y社を下請けに使って処理するのだ。Y社は、ある原発城下町に本社を置く。
 「作業員の多くは、地元住民だ」
 前出原発ライターがこう語るように、地元の人間はY社を通じて原発に足を踏み入れるのだろう。
 こうした多重下請けのシステムは、建設業にも存在する。ただ、原発は被曝 リスクのために電力会社が支払う労働単価が高く、「中間手数料」の旨味は大きくなる。
 原発、もしくは核燃料処理場の立地に絡む部分に、暴力団の影が見えるのは 当然だ。過去には、暴力団が原発予定地の漁協に名を連ね、内部の反対派を切り崩す工作を担ったうえで、高額の漁業補償をせしめるケースがあった。
 そして、原発が存在する全ての土地で、同じことが繰り返されている。「協力会社」や作業員の数はそれこそネズミ算式に増える。
 問題は、盛んに「安価」だと喧伝される原子力発電で、実はランニングコス トが異常にかかっているといケ点だ。
 かつて、日本の電力供給の主力だった水方発電の発電能力はほぼ横ばいだ。 ダムといえば巨大上木建築物であり、利権の集合のようなものだ。それなのに、 出力の面で劣るという点はあるものの、「水力村」はあっさりと屈服している。 「維持」の部分でカネを生みださなかったのが一つの要因だろう。ダムは造ってしまえば、ランニングコストはさほどかからない。
 一方、原子力の場合、立地、建設はもちろん、建設後もカネを周囲に落とし、 また、使用済み核燃料の処理という新たなコストが生じる。つまり「存在し続ける」こと自体が利権となっている以上、それを貪る人間が居座るのは道理な のだ。仮に解体しようとすれば、相当な困難が伴う。
 「原子力村」の上位にある人間はまず、全容を詳らかにするところから始め なければならない。このまま「ものわかりのいい」国民を騙すことは許されな いのだ。
 今必要なのは、原理主義的な反対論でも、無分別な推進論でもない。資源の 少ない地震国家で、原子力の恩恵に与っていた、すべての日本人につきつけられた課題だ。
 「原子力村」で起きていることを客観的にみつめなければ、この国の「原発」 は前にも後ろにも進めない。

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― posted by 大岩稔幸 at 09:55 pm

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