『絶望の中の希望〜現場からの医療改革レポート』 上 昌広
第28回 医療費削減政策を考える
第一回:正規雇用されない医師たち
平成16年に導入された新臨床研修制度と、その見直し案(厚労省がパブリックコメント募集中)について、総合医導入が医療費削減と二人三脚で進められてきたことなど、その経緯や問題点について述べてきました。
2月25日
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/report22_1549.html
3月11日
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/report22_1561.html
3月25日
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/report22_1575.html
今回は、厚労省が様々な医療政策を打ち出す中で、一貫して守ってきた医療費削減政策について考えてみましょう。この根源的な問題を解決しない限り、日本の医療に未来はないと言っても過言ではありません。
【 医療費削減による医療者の雇用数不足 】
我が国の医療費は、OECD27カ国中20位(対GDP比8.1%)と低位にあります。医療費削減政策の結果、日本の病院の73%(うち自治体病院の91%)は赤字となっていますから、当然、人件費を削るため、職員の雇用数も抑えられてきました。全国公私病院連盟と日本病院会の2008年調査によれば、医業収支の赤字は100床当たり月約1261万円に上っています。
病院で働く職種には、医師、看護師、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、栄養士、社会福祉士など、厚労省の統計に挙がっているだけでも約16種類あります。もちろん事務職員も必要です。実際、日本の病院で働く職員167万人のうち医師は10.7%に過ぎず看護師33.9%、看護業務補助者11.9%、事務職員9.2%となっています。
昨年、政府は方針を転換し、医師養成数を増やすことになりましたが、コメディカルに関しては未解決です。実はコメディカルの置かれた状況は医師とは全くことなります。養成数は十分ですが、雇用数が足りないのです。
例えば、看護師の国家試験合格者数は毎年約4.6万人であるのに対し、病院に勤務する看護師数は、ピークの25〜29才においても1才あたり2.7万人しかいません。また、病院に就職した新卒看護師のおよそ11人に1人が1年以内に退職(離職率9.3%)します。
薬剤師の国家試験合格者数は毎年約8千人ですが、病院薬剤師はピークの30〜39才でも1才あたり約1,300人しかいません。厚労省の検討会で、薬剤師の卒業生にとって病院に入れるチャンスは大変難関と指摘されているように、病院の採用数が限定されているのです。他にも、看護業務補助者や事務職員等、資格のない職員も大勢必要です。
これらすべての職種の病院従事者数を合計すると、100床あたり、日本は101人に対して、イギリス740人、アメリカ504人、イタリア307人、ドイツ204人です。同様に、100床あたり看護師数は、日本は34人ですが、イギリス200人、アメリカ141人、イタリア136人、ドイツ75人です(OECD Health Data 2007)。日米の同程度の規模の病院を見ても、日本の病院の人手不足は明らかです。
愛知県がんセンター(473床)とMD Anderson がんセンター(米国、456床)の100床あたり職員数は、それぞれ186人、3,125人と、実に17倍の違いがあります。
これほど人手不足の状況にありながら、日本は世界最高水準の医療を提供しているのですから(WHO Health Report 2000ではっきりと述べられています)、医療現場から過重労働の悲鳴が上がるのは当然です。すなわち、現在の「医師不足」問題は、医師の問題だけでなく、医師以外のコメディカル雇用数の不足という問題なのです。
病院の人手不足による労働負担はすべての職種にかかりますが、特に、無制限に働く状況に置かれた医師の勤務時間は長く、週平均70.3時間(厚労省データ)に上ります。一方、ヨーロッパ諸国の医師の勤務時間は、週平均約40〜50時間です(OECD Health Working Papers)。
日本の医療現場では、医師以外の職種ではなんとか時間制や交代勤務制になっていますが、医師では交代勤務制が未だに実現されず、労働組合も存在せず、入院患者を受け持てば24時間365日働かざるを得ないため、結果として医師が最も安い労働力となっています。1時間当たり単価は、研修医を終えた大学病院の医員で1,449円、医学部教授で1,690円ですが、医学部以外の大学教授では4,566円という報告もあります。
勤務時間だけならば、他にも長時間働く職業はあるかもしれません。しかし、患者の生命に直結する判断を分刻みに要求される医師が、ほとんど睡眠もとれない状態で働いていることは、患者の安全性にマイナス影響があると言わざるを得ません。24時間覚醒時にはアルコール血中濃度0.10%と同程度の注意力しかないことが、イギリスの科学誌Natureに報告されています(アングロサクソンの凄いところは、医療安全が問題になると基礎科学からも同調して研究成果がでてくることです)。これは、ビール大瓶2本飲酒後のほろ酔い〜酩酊初期にあたり、手の動きが活発になる、理性が失われる、脈が速くなるなどの状態で、運転すると交通事故の可能性は6〜7倍という状態です。
産婦人科では平均月4〜6回の当直をしており、そのたびに徹夜で、翌日も通常勤務をしています。このような当直明けの医師たちは、ほろ酔い〜酩酊同然の状態で手術などの診療に当たっています。皆さんは、徹夜明けで36時間連続勤務している医師に、手術してほしいと思いますか?
【 医療費削減によって正規雇用されない医師たち 】
大学医学部6年を卒業した医師のうち、正規職員(常勤職)ポストに就けるのは、わずか40%に過ぎません(厚労省調査)。それも卒後2年間の契約ですから、3年目には解雇され、どの病院に就職するか、常勤職につけるか否か、全く予測ができず、若い医師たちは不安にさらされています。これでは普通の人生設計などできず、将来の夢も持てないのも無理はありません。医師は、特に20〜30歳代のうちは、数か月から2〜3年で勤務先病院を転々とするので、退職金も年金も生涯賃金も考えられない状態にあります。
その最たるものが、厚労省が決めた新臨床研修制度における、1ヶ月ずつ異なる診療科(又は異なる病院)を回る「スーパーローテート」と言えるかもしれません。当の厚労官僚が、財団を新設し、天下りを繰り返して、退職金や生涯賃金を増やしているのとは対照的です。
例えば、私が勤務した経験がある国立がんセンター(厚労省直轄です)では、レジデントと呼ばれる20歳代終盤から30歳代の医師たちが主戦力として働いていました。しかし、彼らは非常勤で、ボーナスも身分保障もなく、1日6時間の日雇いです。1ヶ月分の給与は、20万円前後です。年末年始など休日の多い月は彼らの収入は減りますが、実際に正月も休みなく24時間病棟を支え、当直もこなしています。ちなみに、労働時間を6時間としているのは、それ以上にすると旧労働省サイドから常勤扱いを求められるからだそうです。
さらに、国立がんセンターでは、雇用関係がないために身分も収入もない「研修生」と呼ばれる医師が働いています。彼らは無給です。
前述のとおり医師の交代制は実現していないため、深夜の帰宅、深夜の呼び出しなど緊急対応もしなければなりませんし、病院からタクシー代など支給されませんので、必然的に病院から徒歩圏内に住まざるを得ません。そのため東京の一等地にある国立がんセンターで診療するということは、家賃の高い一等地に住むことを意味します。月収20万円あるいはゼロでは生活できませんから、休日・夜間は地方の病院へ行くなどして当直をこなし、生活費を稼がなければならなりません。こうして休みの全くない生活をしています。毎年のように、家族を養えないという理由で辞めていく医師がいます。
このように、厚労省の長年にわたる医療費削減政策によって、医師の正規雇用ポストは制限されてきました。医師は、社会的身分も保障もないまま、自らの生活の心配をしながら、タダ働き同然で医療を支えるのが当然とされてきたのです。
【 医療費・教育費削減によって大学病院でも・・・ 】
大学病院の医師たちの立場は、目を覆うものがあります。厚労省調査によると、全国の大学病院には、臨床系の教官又は教員22,304人に対し、それ以外の従事者、つまり正規雇用ポストについていない医師が、ほぼ同数の22,384人います。この正規雇用されない医師の割合を年齢階級別にみると、25〜29歳で93%、30〜34歳で76%、35〜39歳で37%となっています。さらに、大学病院と雇用関係がないにも関わらず診療に従事している医師は、文科省調査によると少なくとも5,744人います(ソネットエムスリーより)。
臨床研修制度が導入された平成16年以前は、当たり前のように医師は「大学にたくさんいる」と考えられ、実際に日本のほとんどの病院は医師の供給源として大学を頼りにしてきました。ところが、「大学にたくさんいる」医師たちの多くは、常勤職に就けず、社会保障を得られない、あるいは、非常勤ポストさえない、身分のない医師たちなのです。
医療費と同様に、対GDP比の教育費も、日本はOECD30カ国中26位と低位にあります。特に国立大学は、平成16年、新臨床研修制度導入と同時に独立行政法人となったときに文部省から負わされた借金が、1兆円を超えます。その後も毎年、運営費交付金は約15%ずつ減らされています。
大学医学部の教員数は昭和31年以来、文部省(当時)の大学設置基準により「収容定員720人までの場合の専任教員数」140人と決められています。そして現在に至るまで、教員ポストは増えていないのです。このため、大学では非正規雇用の医師ばかりが増加しています。これで良い医師を育てることができるでしょうか?
さらに、この4月から医学部入学定員が693人増えましたが、文部官僚が教員数や教育費を増やすことはなく、大学病院の現場から上がる悲鳴は、ますます大きくなりそうです。
【 医師不足対策には医療費増・教育費増・ドクターフィー導入が不可欠 】
日本の大学医学部の教員数は、極めて少ないことが知られています。例えば、米国ハーバード医学校の常勤教員数は8,074人、医学生(4学年)は728人ですが、東大医学部の常勤教員数は235人、医学生(4学年)は435人です。医学生一人あたりの教員数は、ハーバードでは11.1人、東大では0.5人です。この教員の少なさは、既に述べてきたとおり、医療費・教育費の削減のために、人件費を削減してきた結果と言えるでしょう。
米国では、なぜこんなに多くの医師が大学教員として働いているのでしょうか。実は、ほとんどの医師は開業医です。開業医が、自分たちの診療所での診療と同時に、一般病院・大学病院での診療や教育を担っているのです。これは、一般病院・大学病院で働いた分の報酬が、きちんと開業医にも支払われるから実現可能なことです。
ところが日本の医療費は、ドクターフィーとホスピタルフィーが分離されておらず、ホスピタルフィーのみで構成されています。厚労省が定めている診療報酬の現行制度では、医療費はすべて医療機関に対して支払われます。医療機関から、医師を含むすべての職員の給与や必要な医薬品・物品購入、機器メンテナンス等の経費が支払われるのです。こうして、開業して病院との雇用関係がなくなった医師たちには、もし病院で働いたとしても報酬を支払わない、つまり、開業医には病院での診療や教育は担わせないというのが、厚労省の方針と言えます。
ちなみに、現場からの意見を反映して、舛添厚生労働大臣の主導で行われた「「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会」の報告書(平成20年9月)や「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」の報告書(平成21年3月)には、ドクターフィーについて明記されています。しかし、厚労官僚は依然としてドクターフィーの準備を始めたという発表はありません。
先般、医学部入学定員を693人増やすことが決まりましたが、焼け石に水といわざるを得ません。厚労省がドクターフィーの導入を拒み続け、9.5万人の開業医を病院から切り離している限り、病院の医師不足が解消されることはありません。現在、問題となっている「医師不足」は、開業医の不足というより、主に病院の医師不足なのです。
厚労省は新たに、病院と診療所の連携や、病院の夜間救急を開業医に手伝わせるなどの施策を進めようとしていますが、開業医にタダ同然で病院に働きに来させるという発想からして、絵に描いた餅に終わるでしょう。
【 診療報酬引き下げによる雇用削減 】
医療機関にとって唯一の収入源である医療費は、厚労省が値段(診療報酬点数)を決め、33兆円の配分を決めています(この意味で医療は完全な「戦時下統制経済」です)。
この医療の値段をほぼ2年に1度削減することによって、医療費削減政策が貫かれてきました。2002年の改定では、マイナス2.7%という大幅な削減が行われ、結果、全国の病院で2.7万人の雇用削減となりました。問題なのは、事務職員や看護業務補助者など資格を持たない職員の雇用が4.8万人減少し(看護師などの雇用数を増やしたためネットでは2.7万人の減少です)、その後も減少の一途をたどっていることです。資格を持たない職員が減少すれば、資格がなくてもできる業務を残された医師や看護師が担うことになるのは当然です。
これに対し2007年12月28日、厚労省は「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」という医政局長通知で、「病院に勤務する若年・中堅層の医師を中心に極めて厳しい勤務環境に置かれているが、その要因の一つとして、医師でなくても対応可能な業務までも医師が行っている現状がある」として、関係職種間で適切に役割分担を図るようにと通達しました。この通達を聞いた現場は、「分担したくてもできる人がいないから厳しい勤務環境になっているのに、一体誰に分担しろというのか」という諦めにも似た無気力感を持ちました。むしろ、厚労省の矛盾する方針の辻褄合わせのために、現場に不可能を要求しているのではないかとさえ思えてきます。
この問題を解決するためには、医師に限らず、すべての病院職員の雇用を増やす必要があります。
【 医療費削減によって権限拡大する厚労官僚 】
なぜ厚労省は、こうまで頑なに医療費削減政策にこだわるのでしょうか。
昭和58年に保険局長だった吉村仁氏が「医療費亡国論」を発表した当時は、経済成長が頭打ちとなり、それまで10〜20%(最大36.2%)を維持してきた国民所得の対前年比が、昭和54年に6.1%、昭和57年に3.8%と落ち込んでいました。ですから、医療費の伸びも抑えなければならないと考えたのは、世界の潮流でしたし、妥当な判断でした。問題は、その後、医療の進歩による業務量増加や国民の価値観の変化、患者のニーズの変化など、時代は変わったにも関わらず、政府が医療費削減の方針を一貫して続けてきたことです。
医療費を削減した結果、医療崩壊が進み、現場から悲鳴が上がれば、厚労省はその「対策」と称して補助金や基金を新たに設立します。医療費そのものである診療報酬点数は削減し続けたままです。このような方法を多用すれば、官僚が焼け太るだけで、医療現場は益々荒廃します。
それは、患者を診療することの対価として得られる医療費(診療報酬)と違って、これらの補助金や基金からお金を受け取るためには、本来の患者の診療には不要なはずの書類作業や、細部にわたる厚労官僚の規制をすべてクリアしなければならないからです。時には、病棟とは「かくあるべし」という厚労官僚の机上の理想を押しつけられて、壁やドアをつくるなど、病院の改装工事までしなければならなかったケースまで聞かれます。患者の診療には不要であり、どんなにくだらないと思っても、医療費を削減されて赤字だらけの病院が生き残るためには、患者のニーズに従うのではなく、厚労省の指示に従わなければならないのです。
これを厚労官僚の側から見ると、全く違った見え方になります。医療費を削減すればするほど、現場は何も文句を言わずに自分たちが決める制度に従ってくれるからです。こうして厚労官僚は、医療費を削減することによって、医療機関を支配する自らの権限を強化してきたとみなすことも可能です。
例えば、新臨床研修制度が導入されたときも、この制度に伴う補助金を得るために、病院は黙って従うしかありませんでした。厚労省の方針が間違っていると現場の医師たちが考え、「こんなもの蹴ってしまえ」と言っても、経営陣の判断で、補助金を得るために厚労省に従ったのです。
また、2009年4月1日、厚労省は「産科医療確保事業」という新たな補助金の通達を出しました。これは、「人手不足によって過重勤務を強いられている医師に、せめて時間外勤務手当を」という現場からの要望に応えて、舛添大臣が昨年から「医師に手当てを」という方針を貫いてきたのを受けたものでした。が、大臣の指示に対して、1年に及ぶ予算折衝の末に厚労官僚が示したものは、診療報酬という医療費本体ではなく、この補助金でした。
しかも、この「産科医療確保事業」では、現場が要望してきた「時間外」の分娩に関わる「すべての診療科医師」への手当という方針を無視して、全く違うものになっています。「すべての分娩」の「産科医のみ」を対象とし(麻酔科医や小児科医は除く)、その代わりに、「分娩費用が50万円未満」の病院と決めたため、高度医療を担う多くの病院には還元されないことになりました(ソネットエムスリー「4/2号 医師個人への「分娩手当」は絵に描いた餅?」)。
また、翌4月2日には、政府・与党が深刻な医師不足に対応するため、「地域医療再生計画」を策定し、1兆円規模の基金を創設すると報じられました(共同通信)。
これによって、現場にとってはいったい何が解決するのでしょうか? 現場が最も困窮しているのは人手不足ですが、果たして病院の雇用人数は増えるでしょうか? 何も具体的な議論はありません。「医療費削減政策を貫き、基金を新設して天下りポストを増やす」という、官僚が描いた絵に与党が従った政策であるかように見えます。
これまで厚労省が貫いてきた理屈は、「給与は雇用関係にある医療機関が払うべきものであり、国が払うべきではない」といったものでした。それがために、これまでの補助金による政策では病院の雇用は増えなかったのです。厚労官僚は、基金であっても同じ理屈を繰り返すことでしょう。
最後に、去る2月3日、厚労省の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」で、現場の医師たちから、渡辺厚生労働副大臣が集中砲火を浴びた場面を少しご紹介します。診療報酬(医療費本体)を削減され、補助金ができても人件費に「使えない」ため、現場がいかに困窮しているか、おわかりいただけるでしょう。
●医師ら:「我々の唯一の血と肉である診療報酬が段々とこうなってしまったから、救急もすっかり疲弊している」「(補助金についても)結局は国が何分の1か出して、残りは都道府県と事業主が負担するという形では、お医者さんのフィーなんて絵に描いたモチだ。」「もう一度確認する。人件費は柔軟に使えるのか。」「使えるようにしていただきたい。往々にして現在の医師に対するインセンティブでなく、他の人を雇いなさいという指示が来る。しかも雇うような医師がいればいいけどいない。」「ちょうど、衆議院議員がいる。これでお金回るとお思いですか。事業者で手当てなんて払えないのがいっぱいいる。だから皆疲弊している」
●渡辺副大臣:「医師がいなければ雇えないというのと類似のもので、来てくれる人がいなければ、この予算も使いようはないのかもしれないが」「無理してでもやるという所を支援しようということ」
●医師ら:「どこも心はある。でも出す金がない。そういうのが分かったうえでの、この予算を読むと、なんだ嘘じゃんとなる」「現場のどこから金を持ってくるのか、みんな赤字なのに。実現可能性がない。こういう制度をずっと国家がやってきた。国の仕組みがおかしいんではないのか。社会保障が大切だというのなら、国がしっかりやりなさい。大臣も現場から声をあげてくれということで、この委員会をやっているのだから、そこを提言したらよいではないか」
●渡辺副大臣:「提言の方は大臣がやっていたので中身まで承知してないが、先生のおっしゃったことは非常に重要だと思う。ただ財政的に厳しい中で、少しでも、一歩でも踏み出して何とかしようということで、今までより踏み込んだ形で、もしやっていただけるなら直接助成するということにした。何とか県の方にも協力を求めていきたいし、それをやっても改善しないのなら改めて別の方策を探りたい」
●医師ら:「財政が厳しいという前提が崩れないなら、この話はできない。これからの日本をどういう国にするつもりなのか。財源をつくるのが政治家の仕事ではないのか」
●渡辺副大臣:「今回は厚労省も何とか工面した」
●医師ら:「それでいこうと言えないのか。何のために議員をやっているのか」「外口局長は法律に従わないといけないんだから、本当にそういう法律があるのか知らないけれど、ルールなら仕方ない。しかし政治家の仕事は法律を作ることのはず。先生方ならできるはずではないか」
医療問題が政治テーマとなって、既に3〜4年経ちました。しかし依然として、病院の雇用者数を増やすという希望は見えてきてはいません。
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上 昌広(かみ・まさひろ)
東京大学医科学研究所 探索医療ヒューマンネットワークシステム部門:客員准教授
Home Page:( http://expres.umin.jp/ )
帝京大学医療情報システム研究センター:客員教授
「現場からの医療改革推進協議会」
http://plaza.umin.ac.jp/~expres/mission/genba.html
「周産期医療の崩壊をくい止める会」
http://perinate.umin.jp/
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JMM [Japan Mail Media] No.526 Wednesday Edition
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【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】 http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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