2007年の問題点

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新しい年が明けた。団塊の世代の大量退職が始まり、少子化進行で大学が全入時代を迎える現象は、「2007年問題」とも言われる。

いびつな人口構成を背景に、日本社会がそのありようを問われる一年になりそうだが、横たわっているのは2007年問題だけではない。

防衛庁の省への昇格は、安全保障の転機を物語る。保障と言えば、高齢者を中心に医療・年金など社会保障への不安が消えない。これらも争点となる統一地方選、参院選、さらに本県では高知市長選、知事選も控えている。

何が変わろうとしているのか。どう変えればいいのか、あるいは変えてはならないのか。教育基本法改正が提起した問題を皮切りに、4つのテーマを年頭に考えてみたい。

教育基本法改正案の国会審議が大詰めを迎えた昨年12月7日、高知市で反対集会が開かれた。目を引いたのは県内小中高の元校長らが、かつて属した組合の違いなどを超えて大勢集まったことだ。

戦前への反省を込めて、「教え子を戦場に送るな」は、戦後教育の合言葉だった。基本法改正を平和憲法改正の布石とみて、危機感を募らせた参加者がいた。愛国心を一律に教え込むことに懸念を抱く人もいた。

その一方で、世論調査を見ると、愛国心を教えることを支持する層も存在する。最近の子どもたちの状況から、国家や公共の精神について教えた方がいいとの考えもあろう。

どちらにも十分な理由があるが、基本法改正に関しては見過ごせない点が潜んでいる。国家と個人の関係をどう考えるか、明治の自由民権運動に倣うと国権と民権のいずれを上位に置くか、という問題だ。

通読した中江兆民が「苦笑するのみ」だったように、1889(明治22)年2月公布の明治憲法は、民権より国権が優先していた。その直後にできあがった教育勅語は、憲法と呼応する内容を持っていた。

これは偶然だろうか。実は憲法と教育の関係は、太平洋戦争の後でも繰り返されている。

 深い所で連動

戦争への反省から生まれた日本国憲法は1946(昭和21)年11月に公布され、翌47年5月に施行された。教育基本法は施行2カ月前の3月に制定されている。

新しい憲法と憲法に準じる教育基本法は、人権を重視し、人間の内面にかかわる部分への国家の関与は抑制する思想で貫かれている。

明治憲法体制とは異なる思想を柱に据えたのが戦後日本の出発点だった。教育基本法制定の翌年、国会は教育勅語の廃止を決議している。

「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する」との条文があるとはいえ、教育基本法改正案に反対の声が上がったのは、国と郷土を愛する態度を養うことが明記されたためだ。愛国心の受け止め方は多様でも、それを学校教育の場に持ち込むことは、憲法の原理との間にあつれきを生じる。思想の自由に対する危機意識が、多くの元校長を高知市の集会に向かわせた面がある。

教育基本法の原理に手を加えることは、深い所で憲法改正問題とも連動する。改正するなら憲法が先という意見もあるが、順序はともかく政党レベルの改憲論が高まってきたのは決して偶然ではない。

ことしで施行60年になる憲法は、これまでは一字一句変えられなかったが、教育基本法改正によって空気が変わる可能性がある。事態は深く、静かに進行している。主権者としての自覚を再認識して、動きを注視したい。

2007年1月1日 高知新聞社説

― posted by 大岩稔幸 at 11:49 pm

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