【シリア対応】介入に「大義」はあるのか
米国によるシリアへの軍事介入問題が、より混迷の度を増してきた。
ロシアのサンクトペテルブルクで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合は、軍事介入の準備を進める米オバマ大統領と、これに反対するロシアのプーチン大統領が各国の支持を取り付け合う場となった。
これにより、各国の現時点での立場もかなり明らかになった。
軍事介入を「支持」する積極派は少数で、米国の同盟・友好国にも態度を保留する国や慎重な国々が多い。
国連安全保障理事会の常任理事国である中国は、以前から反対だ。米国の支持取り付けは苦戦している。
このなかで米側は、一度見送った日米首脳会談の実施を日本に求めた。
安倍首相はオバマ大統領に「米国が非人道的行為を食い止めるとの責任感に心から敬意を表する」と述べ、緊密に連携していく姿勢を示した。
しかし軍事介入への「支持」や「理解」といった態度表明には踏み込まなかった。
ロシアとの北方領土交渉進展とのバランスを取ったとみられるが、拙速な対米追随を避けたのは妥当な判断だろう。
中ロの反対で国連安保理の決議が見込めないなか、米国主導の軍事介入の流れを大きく変えたのは、先月末の英国議会による介入参加の否決だ。
シリアのアサド政権が化学兵器を使用したという疑惑については、現地入りした国連の調査結果も発表されておらず、米英も決定的な証拠を示せていない。
このためオバマ政権も、議会の承認を求める姿勢に転換せざるを得なかった。
さらに軍事介入に最も強く参加の姿勢を示していたフランスも、今では米議会の承認と国連の調査結果を待つ姿勢だ。
米議会では上院の外交委員会が小差で武力行使容認決議を可決し、9日以降に本会議で採決される。
しかし、賛成した議員が猛烈な批判を浴びるなど、反対世論も大きくなっている。
下院の承認も難航が予想される。
結局は、この軍事介入に「大義」があるのかが問われる。日本はそれを慎重に見極めなければならない。
日米首脳会談で安倍首相は「難民、周辺国支援に取り組んでいく」とも述べた。
シリア難民は既に200万人を超えた。軍事介入と切り離し、日本らしい国際貢献を積極的に進めたい。
2013年09月08日
高知新聞「社説」より
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