「誤表示」が示す甘い認識
食品の不適正な表示が後を絶たない。今度は大手のホテルグループで判明した。
阪急阪神ホテルズが運営する東京、関西圏のホテルやレストラン23店舗で、長期にわたってメニューの表示とは異なる料理が提供されていた。グループ別会社のホテルでも同様の事例があった。
同社の出崎社長は「従業員が意図を持って表示し利益を得ようとした事実はない。誤表示だ」と強調する。しかし、意図した「偽装」でも、説明通りの「誤表示」だとしても結果は同じだろう。
消費者は表示から多くの情報を得て対価を払っており、その前提を裏切ったことに違いはない。信頼を売りにしているはずのホテルが失ったものはあまりに大きい。
同社によると、冷凍品を鮮魚やフレッシュジュースと表示したほか、一般的な野菜や肉を有名ブランドや有機などとしていた。いずれも食材の付加価値が高くなるよう表示している。全体として原価率は下がり、より利益が出る形だったのは明らかだ。
不適正な表示は2006年3月から7年半にも及び、利用者は延べ8万人近くに上るという。「被害」の大きさからして、もはや意図のあるなしという範囲を超えている。
原因に対しても、ホテル側の認識の甘さが透けて見える。「従業員が無知、無自覚だった」と説明するが、これだけ広くグループ内で虚偽表示が横行していれば、個々の店舗の問題ではないだろう。病根は深いといえ、グループの運営の在り方、体質が問われている。
事態を把握した後も、同社の対応には首をかしげざるを得ない。社内調査は6月からだったが、9月まで「誤表示」は続く。消費者庁への報告は今月7日で公表はさらに2週間遅れた。
公表前には食材に合うように一部のメニューを書き換えたことも分かっている。消費者目線の乏しいこうした姿勢では代金を返却したところで、信頼の回復は図れまい。
消費者庁は景品表示法に違反するかどうかの調査に入っている。このところ、三重県の米穀販売会社による産地偽装など問題が相次いでいる。消費者の食への信頼をつなぎ止める意味でも、徹底した実態解明と厳正な対処を求めたい。
2013年10月27日付け
高知新聞社説
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