サバをよむ

Maquereauxetal

福井県の若狭湾岸と京都の間には、幾筋もの「サバの道(サバ街道)」が通っている。浜捕れのサバに軽く塩をして、大急ぎで運んだ道だ。京の街に着くころには塩がなじみ、名物のさばずしなどに使われた。

「サバの生き腐れ」といわれるように傷みやすい。低温輸送が発達していなかった時代、日持ちのする塩サバは海から離れた地域でなくとも一般的だった。その意味では「塩サバの道」は全国各地にあり、庶民の味を届けていたといってもよいだろう。

そんな大衆魚の代表格であるサバが高級魚のマグロを産む―。まるで手品か何かのような話がきのうの本紙に出ていた。東京海洋大の吉崎悟朗准教授が年内に研究を本格化させ、五年以内の実現を目指すという。

クロマグロの精子のもととなる細胞をサバの稚魚に移植すると、やがて大きくなったサバから自然受精でサバと一緒にマグロが生まれるという。マグロ版の「代理父母」とでもいえそうだが、素人には何とも不可思議な科学の世界だ。

乱獲によるマグロ資源の減少で、規制は強まるばかり。一方のサバも、水産庁によると資源は低位にあり、漁獲量を減らさないとさらに減少する恐れがあるという。このままではマグロは超高級魚に、サバは高級魚になり、庶民の口から遠ざかりかねない。

研究が成功し、サバがわが子とマグロを産むようになれば、両種の資源増につながる可能性がある。まさに「一石二鳥」。サバから生まれたマグロは「誰の子」、などとは考えまい。

― posted by 大岩稔幸 at 10:36 pm

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