性悪説と性善説

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「疑を以(も)って疑を決すれば決必ず当たらず」。性悪説を唱えた中国の荀子に、こんな言葉がある。あやふやな根拠に基づいて判断すると、結論もあやふやになってしまう、との意味だ。

地方でも始まった第三者委員会による「消えた年金」などの給付審査。荀子の言葉が脳裏をかすめることもあるが、判断の基本は「性善説に立つ」こと。人間は本来悪いことはしないという孟子の思想に倣い、「一応確からしい」ことが分かれば、年金給付が認められる。

性善説で思い浮かべるのは政治資金規正法。国民から選ばれた議員が道に外れたことをするはずがない、との前提に立っているから、概してきつい縛りは設けていない。政治団体の光熱水費、事務所費などの経常経費については、支出に領収書添付を義務付けていなかったのもこうした考えに基づいていた。

ところが…。架空の事務所費、ただの議員会館を事務所にしながらの多額の光熱水費、「ナントカ還元水」という釈明―安倍政権の閣僚から疑惑が次々に出ている。そして今、赤城農相の後援会組織をめぐり不自然な事務所費が指摘されている

先の国会では資金管理団体に限り、光熱水費などで一件五万円以上の支出があれば領収書添付を義務付けるよう規正法が改正された。これだと赤城農相の後援会組織などは対象外。規正法の基本は性善説との考えは根強いようだ。

年金問題で政治が国民に期待するのも性善説。万事めでたしのように見えてどこかしら腑(ふ)に落ちないものが残る。

― posted by 大岩稔幸 at 07:11 am

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