不眠症

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 不眠症は、国民の4人に1人が罹患しているとも言われるコモンディジーズである。不眠症は「眠れない時期」によって3種類に分けられる。

 入眠障害は、寝付きが悪い状態である。ただし、時差ぼけや勤務シフトによる一時的な寝付きの悪さは不眠症には入れないし、明らかに悩みがあって布団に入っても寝付けないという場合も、不眠症には分類されない。入眠障害は、子供のころから寝付きが悪かった人で、中高年になってそれが目立ってくるといった「体質性」のものが多い。

 睡眠の中期が障害されるのが「中途覚醒」と「熟眠障害」である。中途覚醒は、一旦寝入っても夜中に目が覚めてトイレに行ったりするが、その後はまた眠ることができるというものである。熟眠障害は、一晩中うつらうつらするだけで眠った気がしないというものである。

 患者は「一晩中遠くで鳴る時計の音を覚えている」とか、入院の患者なら「看護師さんが訪室したのは全部覚えている」と表現する。中途覚醒や熟眠障害は、中高年によく見られる。中高年になると、一般に睡眠の質は悪くなり、睡眠が浅くなることが生理的にも多い。

 最後に、夜明け前のまだ暗いうちに目が覚めてしまい、その後再び眠れなくなる場合を「早朝覚醒」という。このタイプの不眠症は、最も注意しなければならない。と言うのは、この不眠がうつ病の症状である可能性が高いからである。だから、あなたが不眠で悩むようなら、まずはうつ病の可能性について検証する必要がある。なお、早朝覚醒でうつ病が否定された場合、それは単なる「中高年性」の不眠を意味している。

 この不眠症を、すぐに手に入るアルコールで解決しようとするケースは多い。アルコール依存症は、スクリーニングテストの結果では全国に440万人、より正確な「診断基準に基づくアルコール依存症者数」では80万人と推定されている。しかし、厚労省の患者調査では、実際のアルコール依存症患者は1万7100人(02年10月現在)となっている。つまり、治療を受けているのは47分の1人ということになる。

 アルコール依存に関して、かつては「禁断症状」という言葉があったが、実際には禁酒ではなく節酒しただけでも同じ症状が起こるという理由から、今では「離脱症状」と呼ばれるようになっている。典型的な禁断症状としては、最後の飲酒から24〜48時間後に、手が震え、汗をかき、動悸がみられ、小動物性幻視(アリなどの虫や小さな動物が見える)が起こる。けいれんを伴うこともあり、時に死に至ることもある。このような症状が見られるものをアルコールへの「身体的依存」があると呼ぶ。これに対して「精神的依存」は、「ああ、お酒が飲みたいなあ」と思ったり、お酒がないとイライラするような状態のことである。お酒が飲める人のほとんどは,この「精神的依存」があると思われる。

― posted by 大岩稔幸 at 02:59 pm

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