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車が庶民の家庭にまで普及し始めたころ、新しい車を買うと「新車下ろし」と称して、宴席を設けた。お酒を飲む口実でもあったが、そうやって、新車を買ったうれしさを、仲間たちと分け合ったのだ。
車には夢がいっぱいあった。「いつかは○○」というテレビCMがそのあたりの事情を語っていようか。今は小さな車だが、そのうち、もっと大きな車を、という夢が持ち得た時代であった。
バブルがはじけて正月飾りは激減、その後も回復することなく、過去の風俗になりつつある。車はありふれた移動用の道具となり、地球温暖化も絡んで、かつてのような夢が持ちにくいことになった。
金融危機に端を発した不況で、経営危機に陥っている米国自動車メーカーの最大の失敗は、車を取り巻くそんな環境の変化を見誤り、いつまでも大きく豪華な車を造り続けてきたことにあるのだろう。
GM社がこの危機に際してすがったブランドが、キャデラックやシボレーといった「昔の名前」であることに、それは象徴されている。日本メーカーのような低公害車が、そこにはない。
公的資金の投入で年は越したが、米国の自動車業界が世界経済の時限爆弾であることに変わりはなさそうだ。爆発せぬことを祈るばかり。
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