女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率が、厚生労働省の人口動態統計で3年連続の上昇となった。
上がったとはいえ、08年は1.37、07年は1.34、06年は1.32と、依然人口維持に必要なレベルにはほど遠い。
05年の1.26を底とする深い谷から、辛うじて脱しつつあるというところだろう。
年齢別でみると、出生率の全体の上昇分の6割までを30代が占めている。職場でいえば中堅で、責任も重くなる世代だ。
晩婚、晩産化が進んでいる。この流れは30年以上にわたり続き、ますます加速している。キャリアを積んだ女性がいつでも安心して出産に踏み切れるような支援態勢が欠かせない。
出生率は上がったものの、出産世代の女性の人口は減少している。出生数から死亡数を引いた人口の自然増減数は、過去最大のマイナスとなった。少子化に歯止めがかかったとみるのは早計だ。
背景の一つに未婚率の高さがある。05年の国勢調査によると、30代前半の男性の47%、女性の32%がこれまで一度も結婚を経験していない。
社会が豊かになり、多様な選択肢を得たことも非婚が増えた理由の一つだ。とりわけ女性が経済力をつけ、男性に経済的に依存しなくても生活できるようになったことの影響は大きい。
景気の状況も出生率を左右させる要素だ。昨年秋以降の経済危機で雇用情勢は急速に悪化した。
子育てに専念していた女性が家計を支えるため、再就職を余儀なくされるケースも増えている。出生率を改善するには、子育て家庭への生活支援を強化することも必要だろう。
働く女性の多くが「仕事か子育てか」の二者択一を迫られる状況も改善されていない。出産を先延ばしにしてきた、いわゆる「アラフォー」(40歳前後)の犇遒厩み出産瓩眩えてきている。
女性が望んだときに、安心して出産に踏み切れる環境が用意されていることが理想だ。晩婚・晩産化の進行は、理想と現実との乖離を象徴しているともいえるのではないか。
少子化に歯止めがかからないのはなぜか。当事者たちの切実な声にもっと耳を傾ける必要がある。
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