入試問題投稿


 中国の官僚登用試験だった「科挙」は何段階にも分かれていた。その一つ「院試」では会場での不正を防ぐため、10個の印が用意してあったという。

 受験生が自分の席を離れる「移席」、互いに答案用紙を取り換える「換巻」、四方八方を見回して他人の答案をのぞき込む「顧(こはん)」…。こうした怪しい行為を見つけると、係員が直ちに答案の上にその印を押した(宮崎市定「科挙」)。

 どうやら「携帯」の印が必要な時代になったようだ。京都大などの入試問題が試験中にインターネットの質問サイトに投稿された事件で、仙台市の男子予備校生が逮捕された。詳しい手口などは今後の捜査を待つとして、携帯電話を使ったのは間違いない。

 不正受験の先例は6年余り前に韓国で起きている。携帯電話を使った集団カンニングが発覚し、300人以上の受験が無効となった。事件をきっかけに携帯電話の持ち込みが禁止され、単に持ち込んだだけで受験無効という厳しさだ。

 日本の大学に、携帯電話に対する警戒心はどれくらいあったのか。不正を行った受験生が最も悪いのはいうまでもないが、大学側が隙を突かれたのは確かだろう。備えの甘さが事件につながったといえなくもない。

 ことわざの「人を見たら泥棒と思え」は当初、十分に用心をしてかかれという意味合いが強かったようだ(「岩波ことわざ辞典」)。公正さが命の入試に、用心のしすぎはない。









小社会
2011年03月04日08時16分

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― posted by 大岩稔幸 at 08:48 pm

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