精神科医療について

ENDCIV

 
 中医協総会で議論された「外来における向精神薬の取扱い」について、現在公開されている 資料から、もう一度検討してみたいと思います。
 資料は
○ 精神科医療について  
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001trya-att/2r9852000001ts1s.pdf Link
 のP111〜P125の部分です。
全て印刷すれば136枚也の「大作」で、うんざりしますが、薬物療法について厚労省がどう考えているのかよくわかりますので、10ページだけでも印刷されることをお勧めします。
最初の題名が「外来における向精神薬」であるにもかかわらず、最後の【論点】では 「3剤以上の抗不安薬、睡眠薬の処方」となっているので、報道にも混乱があります。

途中の議論では、CPZ換算やAPAなどの抗精神病薬ガイドラインに言及しているので、「向精神薬」=psychotropic drugsという広義の解釈をしています。途中から 使用実態調査結果の結果にふれ、向精神薬=「睡眠薬と抗不安薬」にすり替わり、さらに 現行の診療報酬評価を持ち出して「麻薬、向精神薬、覚醒剤原料又は毒薬等処方加算」を列挙していて、ますますここでの向精神薬の定義がわからなくなります。

しかし、最後に【課題と論点】で
• 抗不安薬、睡眠薬の使用実態について、抗不安薬で4.2%、睡眠薬で13.6%、 添付文書を 超えた用量の処方がなされていた。
• 抗精神病薬は大量に使用しても治療効果を高めないばかりか、副作用のリスクを高めるこ とが知られており、海外のガイドラインでは慎重に使用することとされている。
だから↓↓ (だからどうしてこうなるのか、論理がわからない)。 海外のガイドラインでは慎重に投与することとされている抗不安薬、睡眠薬について、3剤以上の抗不安薬、睡眠薬を処方する医療機関、調剤する保険薬局 それぞれに対し、診療報酬上どのような評価を行うことが適切か。と明確に論点が記されているので、「抗不安薬、睡眠薬」の3剤以上処方がターゲットに なっているのだということがわかります。
医療課は「多剤処方した場合に、何らかのディスインセンティブを付ける」と公言しているらしいので、非定型抗精神病薬加算のように、使用して単剤に近くなるとご褒美をくれるという加算ではなく、「処方料もしくは処方箋料」の減算を目論んでいるのだと思います。
果たして、現行法令、規則の下で、どのような形で「抗不安薬、睡眠薬」の3剤以 上処方をターゲットにすることができるか考えてみなければなりません。
何人かの審査に関わっている先生方に伺ってみたところ、2つのやり方が考えられる そうです。
(1)向精神薬加算は、すでにレセコンで検出できるので容易。向精神薬が何種類あるかも恐らく検出できる 向精神薬の定義は 麻薬及び向精神薬取締法   http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S28/S28HO014.html Link
第二条  この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。  六  向精神薬 別表第三に掲げる物をいう。 この表を見ると、ほとんどの抗不安薬、抗てんかん薬、睡眠薬は入りますが、 デパス、リスミー、アモバンなどが不思議なことに除外されています。 しかし、抗てんかん薬が入っているため、これだけで3剤以上処方に減算は無理と思われます。 もうひとつは
(2)薬価基準収載医薬品コード 個別医薬品コード(通称:YJコード)   http://www.data-index.co.jp/news/column0804.html Link
というものがあり、これだと薬価基準収載医薬品コードの4桁目までが薬効分類番号 となり、抗不安薬・睡眠薬というコードがあり、この両剤が検出できるようです。 これまた不思議なことに、デパス・リーゼはこのジャンルに入っていません。 しかし、睡眠薬と抗不安薬の区別はできない。ならば、抗不安薬・睡眠薬併せて 3剤以上で減算となり、かなりの患者さんが対象となってしまいます。 医療課が対象をどう考えているのか、情報を収集してみます。正確な情報を掴んで 反論。反対すべきだと考えます。
中医協では、精神科救急の問題については余り議論なく、この向精神薬については 議論が白熱したようです。 支払い側からは、薬剤費を少なくする対策として効果があるという意見が出たとのことですが、あり得ないことです。
このままこの「規制」がなされれば、抗不安薬の代わりにSSRIが多用され、眠前薬 にはNaSSA(テトラミドとどう違うのよ)が代替えされて、さらに薬剤医療費は 高騰すると予想されます。 薬剤乱用や多剤長期投与による「事故」を阻むためには、こんな小手先のディスイン センティブでは効果はなく、抗不安薬・睡眠薬の総力価による検討や、14日処方制限の復活が必要であろうと、個人的には考えています。

― posted by 大岩稔幸 at 04:10 pm

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