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男のファッション

CharlesV

ティツィアーノ作 1533年 マドリード・プラド美術館蔵


 スペインを大国に押し上げた神聖ローマ皇帝カール5世のこの姿は、どことなく昆虫を想起させる。上半身の異様な膨張ぶりに比べ、下半身がほっそりしすぎているせいだろうか(巨漢が着用したら、アメフト選手に見えるはず)。
 当時の王侯貴族は、このように肩も腕も腹も詰め物や張り骨でばんばんに膨らませ、人間の自然な体のラインとはかけ離れた、威圧的で誇張された上衣を愛用した。

当然動きにくくなる。そこで胴部や袖などにスラッシュ(切り込み)をたくさん入れ、生地の伸縮性のなさを補った。スラッシュの隙間(すきま)からは高価なリネンの下着がのぞき、デザインの装飾性を高めることにもなった。

 さて、腰から上の豪奢な変形に、腰から下は何で対抗すべきか?

 現代人の感覚では赤面したくなるけれど、当時は、特大のコドピースこそふさわしいとされた。ご先祖はイチジクの葉っぱだからして、本来なら性を隠すために用いるもの。それを存分に際立たせようとの逆転の発想だ。この絵でも、皇帝がわざわざ右手人差し指で示しているばかりか、愛犬が鼻面まで寄せ、嫌でも目を引く(というより、目が点になる・・・)。

 コドピースの強調は、傭兵たちが最初だったらしい。戦場で大事な個所を保護する金属ケースが「かっこいい」とされ、またたく間に支配階級へ広がるにつれ、木綿になり絹になり緞子になり毛皮になっていった。金糸銀糸で刺繍したり、形も巻き貝型やら何やらバラエティに富んだ。

 なにしろ15世紀から300年間も続いた、ヨーロッパ全土での大流行だから、どんどん進化したし、綿や羽毛を詰めて巨大化した。しまいにはハンカチや金貨、果物まで入れる御仁(ごじん)もいた由。

 「見えのはりすぎ」「下品きわまりない」と非難する同時代人もいたが、誰も聞く耳を持たなかった。脚線美の一部として、なくてはならぬ装飾と考えられていたのである。

 いったい女性たちはどんな気分で見ていたのだろう? 謎である。

 だが奢れるコドピースも久しからず。性を誇示する、男性限定のこのおしゃれは、今や跡形もなく消え去り、とりあえず復活の気配はない。









コッドピース(codpiece)とは、14世紀から16世紀末にかけて流行した、股間の前開き部分を覆うための布のこと。フランスではブラゲットと呼ぶ。
小物などを入れる用にも充てたため、日本語では股袋(またぶくろ)と訳される。
16世紀には当時の体型を誇張する風潮から、詰め物や装飾が施され男らしさの主張となった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%B9 Link














2010.9.7高知新聞朝刊
名画に見る男のファッション 4
(ドイツ文学者)中野京子

― posted by 大岩稔幸 at 12:17 am

1年中履けるブーツが人気

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 何を着るかよりも、どう着るか。そんな着こなし重視の時代を反映してか、コーディネートに不可欠な小物や雑貨が、秋冬シーズンに先がけて人気を集めています。

 中でも特に大人気なのがブーツ。フリンジ付きのブーツや、裏側にファーが付いたモコモコのムートンブーツなど、フラットで履き心地の良いカジュアルブーツが、残暑厳しい8月末ごろから早くもブレークしました。

 ショートパンツから長く伸びた素脚で履いたり、紺身のジーンズをブーツの中に入れたりと、若い人たちの今秋一番のホットなストリートファッションとしてすっかり広がっています。

 見るからに暑苦しそうなムートンブーツですが、実際に履いてみるとそれほどでもないのです。もともとは、サーファーたちの愛用品。実はファーが付いているおかげで内側は外気温の影響を受けにくく、一定の温度に保つだけでなく、通気性に優れ、水分を素早く発散します。そのた暑いときは涼しく、寒いときは曖かく、一年中快適に履くことができるのです。

 一方、西部劇などでおなじみのフリンジブーツですが、これは一枚皮で足を包み込むように作られているので、履き心地は抜群。もちろん一年中履ける優れ物です。特に、切り込みを入れて作ったフリンジ飾りが動きがあってかわいいと評判に。確かにフリンジブーツを履くと、足元に華やかさが生まれ、すてきに見えます。

 またこのフリンジ使いは、春から人気継続中のフォークロアやヒッピースタイルを取り入れたボヘミアンに欠かせません。

 写真の、2008〜09年秋冬ミラノコレクシノヨンで発表されたグッチのボヘミアンスタイルは、その代表例と言えます。刺しゅうやピンタックで飾った東欧調のブラウスを中心に、チェーンや金具で飾ったベルト、ネックレス、革ひもを束ねて作ったフリンジ付きのロングブーツなどを組み合わせています。′

 高度な職人技ですべてに豪華な装飾が施されていますが、ブーツに付けられた特別に長いフリンジの、歩くたびに大きく振れるさまほど、強くて楽しい印象を与える装飾はないでしょう。


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 (ファッションコーディネーター・村上ケイ、写真は大石一男)

2008年11月20日 高知新聞朝刊

― posted by 大岩稔幸 at 11:20 pm

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