井原西鶴の傑作「世間胸算用」。副題に「大晦日(おおつごもり)は一日千金」とあるように、一年の総決算日である大みそかに時を定めて悲喜こもごもの町人の姿を描き出す。
その一つ「銀一匁の講中」は金持ちの商人仲間の資金貸し付けをめぐる話。ある商人について情報を交換し、あの経済状態は見せかけだから、まず少しだけ金を貸して問題がなければ増やしていくべきだ、となる。既に大金を貸していた商人は驚き、仲間の知恵を借り大みそか前に回収に成功するが…。
ビッグスリー(自動車大手三社)の救済をめぐり、すったもんだが続く米国。巨額の支援要請に政府と議会民主党が当座の資金を手当てしようとしたが、共和党は「ノー」。ブッシュ政権の次の手も功を奏するかどうか。それぞれの胸算用が続きそうだ。
海の向こうだけではない。主要産業が減産に踏み切り、中小企業も資金繰りの悪化など窮地に追い込まれつつある。とりわけ厳しいのは雇用調整という名の切り捨てに遭った非正規の従業員。職を失っただけでなく、住むところを追われた人も少なくない。
麻生政権が新たに打ち出した景気対策は「生活防衛」が看板。減税を中心に内容は盛りだくさんだが、助けを必要とする人たちが政治のぬくもりを感じることのできるような中身だろうか。
西鶴が「銭金なくては越されざる冬と春との峠」と表現した大みそかまで、残すところ半月余り。
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