ロックとデニム

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07年12月にオープンしたニューヨーク、ソーホーの路面店。店内にはポップアートやネオンサイン、ミラーボールなどが飾られている。



 「ジーンズが歴史と文化をつくる」とは少し大袈裟な表現かもしれないが、ジーンズはウエアという「物」を飛び越し、「文化の担い手」としての道を歩み始めている。

 ジーンズが誕生したのは今から約130年前、アメリカでのことだ。強い耐久性を持つ厚手のコットンデニムを、ガラガラ蛇が嫌うといわれるインディゴブルーに染めあげたパンツは、その機能性と丈夫さからまたたくまに労働者のマストアイテムとなる。

 しかし1950年代に入るとジーンズを取り巻く環境は一変する。ロックミュージシャンの元祖エルヴィス・プレスリーが映画『監獄ロック』 で見せたジーンズスタイルは、彼のセクシーさと相まって一躍若者の最新ファッションとなる。

 また青春の苦悩を演じた俳優ジェームズ・ディーンの映画『理由なき反抗』 では、ジーンズが若者の情熱を表すウエアとして登場する。その勢いは70年代のヒッピームーブメントでさらなる変化を。

 フレアーのジーンズをはいたロックギタリストのジミ・ヘンドリックスがアメリカ国旗を背に弾く 『スタースパングルドバナー=星条旗よ永遠なれ』 は、「ジーンズは反骨精神の象徴」というメッセージへと進化する。

 トミーヒルフィガーもこの空気を敏感にキャッチし「私の最初のデザインは70年代のヒッピームーブメントの倫理に基づいていました。ジーンズははき心地が良いと同時に、不敵でなくてはいけません」。彼のその気持ちは今でも変わっていない。

 さらに当時のスピリットをアップデートし、今の若者のために新鮮でクリー
ンなヒネリを利かせたデニムコレクションをつくりあげた。

 2001年に発表された(ヒルフィガーデニム) にはアメリカが培ったジーンズの伝統に、味出し感やウォッシュ加工、そしてシルエットなど今の気分がしっかりとデザインされている。
 
 さらに重要なのは、このヒルフィガーデニムにはトミーのアイデンティティーの一部でもあるポップカルチャーのスパイスが盛り込まれていることだ。それは彼が体験した大好きなロックやパンク、ソウルなど、音楽=ロックからインスパイアされたもの。

 そんな音楽好きが高じ、インスピレーションを与えてくれたロックスターの写真集を出版し、さらにミュージシャンとの親交が深まっていった。

 この彼らとのフレンドシップがトミーのつくるヒルフィガーデニムのジーンズに、他にはない重要な味出しを施すこととなる。トミーのミュージックヒストリーがヒルフィガーデニムのDNAとなり、ロックスターからインスパイアされたジーンズには、縦糸に力強いアメリカの伝統が盛り込まれ、個性を表す横糸にはロック魂が注入され、時代と共にあるサウンドやビートが味出しとして盛り込まれているのだ。








SKYWARD 10月号
JALグループ機内誌

― posted by 大岩稔幸 at 07:49 pm

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